顎の骨が薄い場合の
インプラント

顎の骨が薄いとインプラントが
出来ない理由

インプラント治療では、顎の骨に人工歯根を埋め込む必要があります。しかし、顎の骨が薄い場合、人工歯根を十分に支えることが難しくなることがあります。骨が十分にある場合に比べて、インプラントの安定性が低下し、長期間にわたり機能を維持することが困難になる可能性があるためです。

また、インプラントの人工歯根は天然歯の歯根に比べて細いため、清掃性を高める目的で骨を厚くする処置が必要となる場合もあります。

インプラントをするのに必要な骨の厚み

インプラント治療には、一定の骨の厚みが必要とされます。一般的に、骨の厚さが最低でも3mm以上必要とされており、これを下回る場合、インプラントの安定性が確保できず、治療が困難になる可能性があります。

骨が薄い場合のインプラントのリスク

骨が薄い場合、インプラントが顎の骨に十分に固定されないリスクがあります。その結果、長期的な安定性を失い、インプラントが動揺したり脱落したりする可能性が高まります。また、周囲の骨や組織に負担がかかり、損傷を引き起こす恐れもあります。

顎の骨が薄い場合の治療方法

骨造成治療

骨造成治療とは、顎の骨が薄い、または骨量が不足している場合に、骨を増やしてインプラント治療が可能な状態に整えるための治療です。この治療では、人工骨材料や患者自身の骨を用いる方法があります。これにより、骨を厚くし、安定したインプラント治療が可能になります。

骨造成法のメリット・デメリット

メリット

1. インプラント治療の可能性が広がる 骨造成法によって、元々インプラントが難しかった患者さんでも、治療を受けることが可能になります。
2. 機能的な回復 歯の機能を向上させ、噛む力を回復させることができます。
3. 見た目の改善 歯のない部分に骨が再生されることで、見た目の美しさが回復し、自然な笑顔を取り戻すことができます。

デメリット

1. 治療期間が長い 骨が十分に成長するまで時間がかかり、治療全体の期間が長くなることがあります。
2. コストが高い 骨造成治療は技術的に複雑であり、治療費が高くなることがあります。
3. 手術に伴うリスク 手術には感染のリスクや、まれに予期しない合併症が生じる可能性があります。

骨誘導再生法(GBR法)

骨誘導再生法(GBR法)は、特定の材料を使用して骨の再生を促す治療法です。この方法では、バリアメンブレンという膜を用いて骨と非骨組織の間に空間を作り、新しい骨の形成を助けます。特に、インプラント治療の前に顎の骨を増やす際に有効な手法です。

骨を増やす処置は、人工歯根(インプラント)を骨に埋め込む処置よりもやや難易度が高いため、処置時間が長くなることや、術後に腫れが生じることがあります。一方で、人工歯根の埋入自体は比較的痛みが少なく、痛み止めを飲み忘れるほど軽度な場合が多いのが特徴です。

サイナスリフト法

サイナスリフト法は、特に上顎の臼歯部で歯を失った際に、インプラント埋入に必要な骨の量を増やすための手術です。上顎の骨は、その下にある副鼻腔の一部である上顎洞(サイナス)に近いため、骨が不足していることが多く見られます。この治療法では、上顎洞の底を慎重に持ち上げ(リフト)、その下に新しい骨を形成する空間を作ります。

サイナスリフト法は、骨量が不足しているため通常のインプラント治療が困難な場合に適用され、インプラント治療の選択肢を広げることができる点が大きな特徴です。これにより、上顎のインプラント治療をより多くのケースで可能にします。

骨造成治療の流れと治療期間

治療の流れ

1. 初診・カウンセリング まずは患者様の口内を詳しく診察し、レントゲンやCTを使って正確な診断とともに現在の骨の状態を確認します。なぜインプラントを希望されたのか、他の治療法と比較してインプラントが最善なのかなども専門のカウンセラーと一緒に確認していきます。
2. 治療計画の立案 患者様の状態に合わせて、どの骨造成法が適切か決定し、治療計画を立てます。この計画には、必要な手術の内容や、期待できる結果、必要な期間などが含まれます。
3. 手術 局所麻酔を使用して、計画に基づいた手術を行います。手術では、人工の骨材料を使う場合や、患者様自身の骨を使う場合があります。
4. 回復期間 手術後、新しく造成された骨が健康な状態になり、十分な強度を持つまで回復を待ちます。この期間中は、定期的なフォローアップが必要です。
5. インプラント埋入 骨造成後に十分な骨量と強度が確認できたら、インプラントの埋入手術を行います。
6. 最終的な復旧 インプラントに人工の歯を取り付け、咬合(噛み合わせ)の調整を行い、治療を完了します。

治療期間

骨造成法の治療期間は、手術の種類や患者様の回復状況によって異なります。一般的には、手術からインプラントの埋入までの期間は、数ヶ月から半年以上かかる場合が多いです。これは、新しい骨がしっかりと成長し、インプラントを支えるのに十分な強度を持つまでの時間が必要だからです。その後、インプラントに人工の歯を取り付けるまでさらに数週間から数ヶ月かかることもあります。

患者様の健康状態や骨の成長速度は個人差がありますので、正確な治療期間は担当の歯科医師との相談の上で決定されることになります。